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オドロキのキッチン
1月7日から14日まで、インドネシアへ急ぎ足の出張に出た。
今回の仕入旅はちょっとした縁があって建築士のY氏、M氏のふたりに、私を加えた3人旅だった。
扉やマンションのサインボード、内装の建材、装飾などを探しに来たふたりだったが、家具を作りに来ている私とは違った視点でモノ探しをしていたのが面白かった。
バリのバイパス通りを走っていたら途中でM氏がこうつぶやいた。
「あ・・キッチンの・・店・」
キッチンのシンクも何かオモシロいものはないかと、石やレジン製のものを見て回ったが、なかなかコレというものが見つからない。
そんな時、車の窓から 『KITCHENS』 という大きなサインをつけたガラス張りのショールームが見えたのだ。
車の進行方向と反対側の車線沿いにあったので、通り過ぎてからUターンしなければならなかった。
ところが反対側の車線は大渋滞。
そのショールームに戻るにはだいぶ時間がかかりそうだった。
ワタシの仕事の時間を削ってしまうと気を使ったY氏は 「やめましょう」 と言ってくれたのだが、その日はスケジュールをほぼこなしていたし、またワタシも興味があったので、行ってみようという事になった。
Uターンし、渋滞の列に加わりノロノロと進む。
やっと着いたらクローズだった。
我々3人は大きな全面ガラスにへばりつくように中をのぞく。
店内には恐ろしく高級そうなシステムキッチンが並んでいた。
その中でも目を引いたのがオールドチークをふんだんに使ったキッチンカウンター。
横幅は、そう・・5mほどあるだろうか・・
コレが入るキッチンて、よほどデカイ家だよな。
高いんだろうなあ、と思いながら眺めていたらM氏がこう言った。
「コレ、トーヨーキッチンのパクリですよ。トーヨーキッチンのは本物の木を使っていないけど、コレは本物の木ですねえ・・いくら位するんだろうなあ・・」
「その、トーヨーキッチンのはいくらするんですか?」
とワタシ。
「トーヨーキッチンだったら700万。」
な、ななひゃくまん~!?
それから3人で、このキッチンカウンターがいくらなのか喧々諤々。
「そんなに安くないだろ」
「いや、結構そんなものかもしれませんよ」
「いくらなんでもこれくらいはするでしょ」
「そんなに高くはないんじゃないかな・・」
そして、コレが実際にいくらなのか賭けをすることになった。
一番近い金額を言ったものに、他のふたりが一杯ご馳走するというものだ。
3人とも散々悩んだあげく
Y氏は50万、ワタシは120万、M氏は200万の値をつけた。
さて、翌日から我々3人はジャワへ。
そして3日後にバリに戻ってきた。
AM10:15にデンパサールの空港着。
さっそく 『KITCHENS』 へ。
意外なことにオーナーはフランス人だった。
愛想のよいバリ人と違って、我々を値踏みするように店の奥から視線を投げる。
我々は件のキッチンカウンターへまっしぐら。
おー、高そう。
引き出しのレール金物もフランス製、木材料も高そうなものを使っている。
ただ、ところどころ雑な部分も見える。
ここまでいい材料を使ってんだからも少し丁寧にした方がいいんじゃないかな、というところもある。
フランス人オーナーに値段を尋ねた。
「いくら?」
「インドネシア語はできる?」
「少し」
「リマブラス・ジュタ」
「リマブラス」は15、「ジュタ」は100万。
つまり1500万ルピアってことだ。
トーヨーキッチンの700万が頭にあったので思わずワタシはインドネシア語がわからない建築士二人に言った。
「150万だって。(120万を出した)オレのひとり勝ち!」
我々の盛り上がり方を見てフランス人オーナーは
「高い?」
と訊いてきた。
「いや、高くないよ、だって日本だったら・・ン?・・」
リマブラス・ジュタ・・・1500万ルピア・・
今、円高なので1円は約100ルピア。
ってことは・・1500万ルピアは・・約15万円・・
15万!!
「間違えた!15万だ!」
「15万!?」
「安っ!」
我々3人の驚きようを見てフランス人オーナーは得意そうな顔をしていた。
15万という値段にも驚きだけど、トーヨーキッチンの700万ってどういう数字なんだろ?
最後に、お愛想のようにワタシが尋ねた。
「もし注文したら、何日くらいでできる?」
「何日、と訊くな。何ヶ月と訊け。」
ハイ。スミマセンでした。
写真を撮ってもいいか、と訊いたらダメだって。
見たい人はここに行ってね。
愛想の悪いフランス人オーナー、ヨハンさんの名刺です。