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お疲れ様でした
学生時代にバイトをしていたスナックが、3月末を持って閉店することになった。
もう50年もやっている店で、ママは今年80歳になる。
多感な頃に3年間働いた店なので思い出深い。
その知らせを聞いたのが3月24日。
最後に顔を出しておくか、ということで3月30日東京へ。
7時少し前に池袋に到着。
待ち合わせていた旧知の女友達と食事をしてから一緒にその店へ。
閉店の知らせを聞いて集まったのだろう、いつもはヒマな店が今日はほぼ満席だった。


私がバイトしていた当時、そこは体育会系の学生が集まる店で、その日も客は応援団や合気道の先輩や同期、柔道部、剣道部の後輩などと運動部のOBばかり。
私の斜め前に座っていた応援団のT先輩は私が1年生の時の4年生で、昔のことをすっかり忘れる私がなぜかよく憶えている先輩だった。
空手部の1年生と応援団の4年生など、ほとんどしゃべる機会は無いのに、その先輩が卒業して消防庁に入ったこと、初任の消防署では19歳の先輩署員に怒鳴られた話など、記憶に残っていた。
私の座った席の横は柔道部の後輩。
同じ時期に在校していたわけではなかったが、共通の知人の先輩後輩の話で盛り上がった。
あとから店に入ってきた紳士は私よりずっと貫禄のある人だったが、柔道部の後輩が彼に耳打ちすると
「剣道部の〇〇と申します」
と、私のところに挨拶に来た。
きっと後輩なのだろう。
ちょと緊張した(笑)
合気道の同期、カマガタが
「いよ~、ツバキ久しぶり!」
と声をかけてきた。
その合気道部のグループは先輩後輩が混在するらしい。
困るのは、こちらが憶えていない顔が
「ツバキ、ひさしぶり~」
と声をかけてくる場合(なにしろ人の顔を憶えるのがすこぶる苦手なので)。
同期かもしれないが先輩かもしれない。
「誰ですか?」
とも訊きづらい。
「おお、久しぶり」
と応えて先輩だったらマズイし、
「おひさしぶりです」
といって同期だったら恥ずかしい。
10年前、この店の40周年パーティは大学の学食を借り切って行われた。
その時は200人近くの卒業生が集まったが、みな名札を付け、その名札には卒業年度が記されていた。
「おお、ツバキひさしぶり~、元気か?」
と声を掛けられると、人の顔を憶えられない私は素早く名札に視線を走らせた。
名札、必要だよ~。
犬の世話があるので女友達は帰ったし、終電の時間が近ずくと次第に店は空席が多くなり、やがて私ひとりになった。

「アタシ、帰ってもすぐ眠れないからさ、ツバキもうちょっと付き合ってよ」
とママが言い、皆が帰った後の片づけをしながら昔話をした。
〝これからのこと〟はあまり話さなかった。
明日が最後の営業日。
4月7日までに店を片付けて、その後この建物は取り壊すそうだ。
まだ封の開いていないウィスキーのボトルが何本もあり
「ツバキ、持って帰ってよ」
っていわれてもな~。
ママとお別れをし、歩いてホテルに帰るとと4時半だった。
ママお疲れ。オレお疲れ。
翌日はひとり花見をし、昼過ぎの新幹線に乗った。

東京は桜が満開だった。