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ワタシの知らない砥石の世界
何年か前のブログにも書いた、木への思い入れがハンパじゃない美川の大工の棟梁、イズクラさん。
『天板の無いチェスト』
http://old.tubaki-ya.com/2012/03/post_210.html
設計から施工までほとんどひとり(&弟子ふたり)でやる珍しい大工さんです。
先日久しぶりに電話があって、こんなもんあるかと訊かれ、ちょうどいいのがあったので写真と寸法を送ると現物を見に来ました。
「無塗装のヤツある?パテもサンダーも塗装も、全部ワシがやる。」
というので翌日持って行きました。
ま、ちょっと上がってけや、と工場の2階の事務所でお茶タイム。
パテの材料の話から漆の話、それからいろいろあって砥石の話へ。
上の写真の砥石は割れないように砥石の周りに麻布を巻いて漆で固めてあるそうなのですが…
その砥石の値段、左が30万、右が20万。
ええ~!
右の20万のヤツは井波の欄間職人が買って行ったけど硬すぎて刃が負けるので使えない、と返品したものを買ったそうです。
「砥石は一に硬さ、二に商人」と言って硬いほどいいそうなのです。
「二に商人」て何ですか?と訊くと、砥石を触って実際に研いで、そのあと売り主の目をじっと見つめこいつはどれだけ乗っけてるか、計るのだそうです。
「大工にとってな、砥石を買うのは真剣勝負なんや。」
で、コレが名倉砥(なぐらど)。
砥石を研ぐための砥石だそうで3万円。
ハハハ。ボク、最近は砥石を使わずに、円盤状の砥石がグルグル回る電動の刃研ぎマシン使ってますけど。
砥石にも名前があって前出の20万と30万のヤツが「栗毛」。
で、下の黒い模様の入ってるのが「烏」(カラス)。
ほら、カラスが飛んでるみたいでしょ。
このカラス、高そうですね~。
「いや、そんな高ない。4万や。」
厚みが薄いのは安いのだそうです。
十分高いですけど。
日本全国に砥石の採掘場はあるけれど、これらの高~い砥石は京都の本山(もとやま)というところでしか採れないそうです。
目の前に出された5本の砥石と3本の名倉砥はすべて仕上げ砥。
このほかにも中砥や荒砥があるんでしょ。いくつ持ってんですか?と訊いたら
「あそこにタンスがふたつあるやろ。あん中ぜんぶ砥石や。」
イズクラさんから聞いた話です。
那谷寺のお抱え宮大工だった〇〇さん(スミマセヌ、名前忘れました)。
その〇〇さんが買った砥石が500円。
それをいくつかに切って弟子たちに与えたそうです。
当時、500円で家が一軒建ったそうです。
ワタシの知らない砥石の世界でした。
「あ、そろそろ時間なんで帰ります。」
「ワシな、砥石も持っとるけどカンナはもっと持っとるで」
次回、『ワタシの知らないカンナの世界』を…