ブログ
BLOG
『バティックの古都を行く』
先週は5か月ぶりに家具製作のための出張に行ってきました。
出発の直前、自宅にAGORA(アゴラ)という情報誌が届きました。
毎月送られてくるものですが、月末はいつも金が足りない、とつぶやいている当方に〝エグゼクティブのための知的情報誌〟とは笑っちゃいます。
JALが発行している月刊誌で、内容はなかなか面白いのです。
今月号の特集は『バティックの古都を行く』でした。
バティックとは日本ではジャワ更紗と呼ばれ、古くからインドネシア各地で作られている ろうけつ染め の布です。
特集はそのバティックのルーツを辿り、中部ジャワの中心都市ジョグジャカルタと、古都ソロを訪れるというもの。
ちょうど今回の出張もAGODAの記事同様、ジョグジャに入り、ソロまで行って帰ってくるという行程でした。
記事を読み進むうちに、いつもバタバタと仕事だけをこなしてくるのではなく、たまにはゆっくりとバティックでも眺めたいな、という気持ちになりました。
家具工場との打ち合わせも終わり、出張の最終日は夜8時のフライトまでに片づけなければならない仕事はふたつだけ。
それも大した仕事じゃないので余った時間はたっぷりとありました。
AGODAの記事の中にこんな一文がありました。
『ソロで、ぜひ訪れたいのがダナール・ハディ・アンティーク・バティック博物館。ダナール・ハディはインドネシアの三大バティック企業の中でも、中国系ではなくジャワ系オーナーが経営することで知られる。博物館には貴重な古いバティックが数多く展示され、中部ジャワはもちろん、国内各地のバティックの歴史を、時代を追って知ることができる。』
ワタシのソロの定宿から歩いて4~5分のところにあるのがこのダナール・ハディのバティック博物館。
何回か訪れたことがあります。
何代か前のダナール・ハディ家のお嬢さんがソロの王家に嫁いだのでこの家は王家の親戚筋です。
博物館の中にはその結婚式の時の写真も掲示されています。
値段のつけようがないほど貴重なアンティークバティックがたくさん展示されていますが、圧巻なのは博物館と隣接した工房です。
おそらく100人を超える職人たちが熱気の中でバティックを製作しています。
その工房が1年ほど前に、車で15分くらいのところに移転したらしいのです。
新しい工房を見てみたいと思い、ダナール・ハディへ。
たしか午前10時からだったので11時に行ったら、今は午後1時からの開館になっていました。
いくら今日は時間があるからと言って、2時間つぶすのはちと辛い。
そうだ、AGODAに載っていたカウマン地区へ行ってみよう。
このカウマン地区というところには行ったことがありません。
AGODAの記事によると
『ソロにバティック村があるというので訪れてみた。カスナナン王宮の近く、細い路地が縦横に続く一角がカウマン地区。ここはもともと王宮ご用達のバティックを生産する職人たちが集まっていたエリア。現在も80件ほどの工房が軒を並べている。』
たまたまここのある工房にドライバーのデニさんの知り合いがいるらしい。
よし、行ってみよ。
バティック村の地図看板。小さなエリアにバティック工房がひしめきます。
我々が訪れたのはここ。『バティック・プトラ』。
ダナール・ハディのような大工房ではなく、この地区の工房は少人数で制作しているようです。手描き(トゥリス)バティックにろうを落とす女性は5人。
もともと熱帯の気候の上に、ろうを溶かしたり、布に置かれたろうを洗い流すための湯を沸かしたりしているので工房の中は蒸し風呂のようです。こちらは立って見学しているだけなのに汗がしたたり落ちます。
チャップというのは銅版でろうを型押しして布に模様を置くもの。写真を撮ってもいいですか、と声をかけるとあわててシャツを着始めるチャップ職人のおじさん。
ハイ、撮ってもいいですよ。
この熱したろうにチャップを付け、布にスタンプします。
この工房のチャップ職人はふたり。チャップは男性の仕事です。
模様がずれないように正確にチャップでスタンプしてゆくのは熟練の技が必要とされます。
この職人がスタンプしていた、このバティックらしからぬ模様がワタシは気に入りました。
「この柄のバティックが欲しい」というと若い娘さんたちが3人がかりで探してくれました。
結局色違いで3枚見つかりました。
思案の挙句グリーンの生地を選ぶと・・・
彼女たちはそれを広げ、これは色むらがありますがいいですか?と訊いてきました。
私の目には、その色ムラは言われればそうかな?という程度のものでした。
そして、会計の時に女性の一人が言いました。
「当店では値引きをしませんが、この布は色ムラがあるので10%の値引きをします」
しまった・・・
このときまでこのバティックがいくらなのか訊くのを忘れていた。
このバティックにはグリーン、ブルー、イエローの三色が使われているので、少なくとも布にチャップでろうを置き、染色して、湯でろうを洗い流す、という工程を3回以上行っているはずです。
高いのかなー。
初めに値段、訊いときゃよかったなー。
と、彼女が差し出したレシートを恐る恐る覗き込むと・・・
このバティックは3メートルなので
3×Rp80,000=Rp240,000-10%=Rp216,000!!!
なんとメーター当たり約700円!!
3メートルで2000円ちょっと。
プリントした布じゃないんですよ。
これをカミさんの土産にすることにしました。
値段は黙っておくことにしました・・・