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六泊七日
年末に6泊7日の出張に行ってきました。
いえ、ワタシじゃありません。
我が家の飼い犬、ハナのことです。
ああ、よくご存知ですね。
前のハナは一昨年死んじゃって、今のハナはハナ2号なんです。
姿かたちはそっくりなんですけど、ハナ1号は賢くて人懐こい犬でしてね、時々出張に出てはひょっこり帰ってきたもんです。
ハナ1号、昔の、有松の店のころはいつも店の事務所にいたのですが、ワタシが出かけていて店にいないとわかると、事務所から店を通って、自動ドアが開くのを知っているので自分で自動ドアのところに行って、ドアが開くとトコトコと出て行ってしまうのです。
店の女の子たちが「ハナ~!ハナ~!」と呼んでもチラチラと振り返りながらどこかへ行ってしまう。
そして夕方に帰ってくることもあれば、2~3日して帰ってくることもあったのです。
ある時、ハナ1号が出て行ってしまってから4~5日経ったころのことです。
店の裏にゴミを出しているとハナ1号が知らない女性にリードを引かれ散歩をしている(!)
「あ!ハナ!」と呼ぶと尻尾を振ってこちらへ来る。
よくよくその女性にお話を聞くと、フラフラしていたハナ1号を保護してくれ、「チビ」という名前を付け、お家で飼ってくれていたらしいのです。
そんなことで1号は人懐っこくおとなしい、賢い犬だったのでいなくなってもあまり心配はしませんでした。
でもね、今のハナ2号は1号と姿かたちはそっくりなんですが、1号と違って人が怖くて仕方がない。
捨てられたのか、迷ったのか、野良状態のところを捕獲され処分されそうだったのをドッグレスキューの方たちに引き取られ、そこから我が家へ来たんです。
だから今でも家族以外の人間は怖くて怖くてしょうがない。
散歩の時間が通学時間帯だったりすると、もう子どもを見てキョロキョロ、オドオドして尻尾は下がってしまいます。
最初に我が家に来たころは、家族にもそんな感じだったんですよ。
尻尾はいつも下に下がりTVボードの後ろやソファの下のもぐりこんで出てこない。
そのうちにだんだん馴れてきて、尻尾が上向きにクルリと丸まったのを見たのはウチに来てから半年も経ったころです。
今では、おばあちゃん家に迎えに行くとシッポはぶんぶん、嬉しさのあまり廊下を走り回ってます。
12月24日の午後2時頃、ワタシのケータイにおばあちゃんから電話がかかってきました。
「ハナが逃げちゃった。どうしよう…」
ハナは家の中で飼っているのですが、昼間は誰もいなくなるのでさびしいだろうからと、おじいちゃん、おばあちゃんの家に預けてあります。
時々庭に出してやると嬉しそうに歩き回るので、その日もそうしていたらしいのですが、ゴロゴロと雷が鳴るといつもは出ることのないフェンスの下の隙間から外へ出て行ってしまったのです。
ハナ2号は雷の音が怖くって、家の中にいるときはゴロゴロと音がするとコタツの中へもぐりこんで出てきません。
向かいで作業をしていたフジタと、家の中からそれを見ていたおばあちゃんがあわてて「ハナー!」と呼んだけど雷の音から逃げるように一目散に走って行ってしまいました。
ムスコは学校から帰ってきてその話を聞くとハナの逃げた方向にハナを探しに行きました。
冷たい雨の中、1時間ほど探していましたが結局見つかりません。
前にも一度だけ逃げ出して、翌朝おばあちゃん家に帰ってきたことがあったので、誰もがきっと帰ってくると信じていました。
しかし、翌日もハナは帰ってきません。
カミさんは自分のフェイスブックで、ハナが迷子です、見かけたら連絡ください、と投稿しました。
三日目にはさすがに心配になりました。
以前の一泊外泊は春のことでした。
今は冬です。
家の中で暮らしていたハナにとってこの寒さは堪えるに違いありません。
そうだ、つばきやのフェイスブックのページにハナのことを投稿してみよう、ということになりました。
ワタシもカミさんもFB上の友達は100人前後ですが、つばきやのFBページに「いいね!」してくださっている方は700人以上いらっしゃる。
その人たちにハナっぽい犬を見かけなかったか尋ねてみよう、ということでした。
つばきやのページに投稿すると、たくさんの方にご心配や励ましの言葉をいただきました。
そして、目撃情報もありました。
ドッグレスキューの方たちも様々な形で助けてくれました。
臆病な犬は人や車の往来の多い昼間はあまり動かず、夜明け前に移動する、という話を聞いたので我が家も夜明け前にハナの捜索へ行きました。
暗いうちに外へ出ると雪が解けてできた水たまりは、夜中の冷気でバリバリに凍ってました。
車のフロントガラスはびっしりと霜が付き、スノーワイパーの固い部分でガリガリと削り取ります。
こんな気候の中でハナはどうしているのでしょうか。
人に馴れない犬なので、前の1号のように誰かに保護されているとは考えづらいのです。
いろんな方の体験談を聞きました。
迷った犬は神社や公園の植え込みの中に潜んでいることが多いそうなので、目撃情報のあった付近の神社に車を停め、そんな植え込みを見つけては「ハナ!」と呼びかけてみました。
冬でも薄茶色の葉を繁茂させた植え込みはパッと見に外から中の様子は見えません。
ムスコとカミさんと三人で手分けして植え込みや神社の軒下に向かって「ハナ!ハナ!」と声をかけて歩きます。
空も白んできてその日の捜索は終了。
捜索が終わった後、ムスコは毎回こう言います。
「オレ、今日はハナが帰ってくるような気がする。」
ワタシは、そうだな、と言いながらも心のどこかにもう衰弱しているかもしれないな、という気持ちもありました。
もしかしたらムスコにもそんな気持ちがあったのかもしれません。
それを打ち消すための発言だったのかもしれません。
ハナがいなくなって4日目と5日目、暖かな日が続きました。
フェイスブック上では300人以上の方がハナの迷子の投稿をシェアしてくれました。
3万人近くの方がその投稿を読んでくれました。
つばきやにご来店いただくお客さまも、ハナちゃん見つかりました?と心配され声をかけてくれました。
にもかかわらず、暖かかった2日の間にハナは見つかりませんでした。
12月30日。
正月のものを買出しに近江町市場へ行きました。
駐車するのも大変だと聞いていたので、近江町の近くまで車で行きカミさんと運転を代りワタシだけ買い出しへ。
カミさんとムスコは別の買い物へ。という作戦でした。
近江町へ近づくと早くも渋滞しています。
信号待ちの間に、よし、今だ、とカミさんと運転交代です。
助手席から降りようとするカミさんのケータイにおばあちゃんから電話がかかってきました。
カミさんは運転席に座りながら
「もしもし…え~!ホントー!ウレシイィー!すぐ帰るね!」
車の外にいるワタシはカミさんに
「ハナか?」
と訊きましたが信号はすぐに青。
カミさんはうなずきながら走り去っていきました。
ハナが帰ってきた………らしい。
後でおばあちゃんに訊くと、その日、裏の土間の戸を開けるといつもと変わらない様子でスタスタと中に入ってきたそうです。
一週間も外をさまよっていたのだからどんなにかズタズタ、ボロボロ、憔悴しきっていたかと思いきや、まったくフツーでした。
犬ってのは強いもんです。
どこで何をしていたのでしょうか。
何を食べて、どこで水を飲んでいたのでしょうか。
どこで雨雪露をしのいでいたのでしょうか。
ハナが口を利けたらなぁ。
この日ほどそう思ったことはありません。
6泊7日のご出張、お疲れさんっした!