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とうもろこし畑



先週、家具工場への発注のため、ジャワへ出張に行ってきました。

雑貨やアイアン製品の製作などの余分な買い物は一切無し。

ふたつの家具工場を訪問するだけの4泊5日、実質3日間の特急出張です。

それでも1日は予備日を設けてあります。

 

先進国と違い交通インフラが未熟なインドネシアは、飛行機が飛ばないというアクシデントが時として起こります。

定刻通りに離陸したことなど数える程度です。

また、インドネシア人の気質も我々からすると、おいおい頼むよ…とうなだれたくなるようなことがあります。

〇月〇日に行くからね、と1ヶ月以上も前から念を押してあるのに(1ヶ月前というのは彼らにとって逆に長過ぎるのかもしれませんが)、訪問前日に再度確認の電話を入れると

「ゴメン。明日は結婚式だった。」

なんて言われたこともありました。

そんな空振りに備えての予備日なのです。

 

 

今回は飛行機トラブルも、インドネシア人気質トラブルもなく(大概はそうなんですが)、2日間で予定の商談が終了。

予備日の3日目はカーゴ屋の女社長にランチをごちそうになったり、ちょっと遠いのでなかなか顔を出せない古家具屋に行ったりしました。

その帰り路。

ブンガワン・ソロ(ソロ郊外の川)のあたりを車で走っていると、もうじき日没という時間。

あたり一面はとうもろこし畑です。

沈みかけた太陽が地面や空やとうもろこし畑を照らし、黄金色のフィルターをかけたように景色が輝いています。

美しい景色です。

つばきやの家具を発注する家具工場の近くなので時々この場所は通るのですが、この景色に出会えるのは日没前のわずかな時間だけです。

久しぶりにこの美しい風景を見て思い出しました。

 

 

10年ほど前、ちょうどこのあたりを、この時刻に走っていたことがありました。

その時は、ウチで働いていたカナオカ君と一緒でした。

将来はウチと同じような店を持ちたいというカナオカ君が出張の同行を希望し、彼を連れて仕入旅をしていたのです。

カナオカ君は家具工場でのワタシの商談を見学し、その商談も終わり、ホテルへの帰り道、ちょうどこの日没前の黄金色のとうもろこし畑を通ったのです。

 

穏やかで、物静かで、友達を大切にするカナオカ君は控えめな性格で、自己主張することもあまりありませんでした。

そのカナオカ君が珍しく、

「すいません。ちょっと車を停めてもらってもいいですか。」

と言いました。

彼は車から降り、3呼吸ほど景色を眺めた後、周りの風景の写真を撮り始めました。

 

 

以前、ラジオである映画館の館主がこんな話をしていました。

映画好きに、あなたの人生最高の映画は何ですか?と言う質問をすると、必ずその人が二十歳前後に観た映画を挙げるそうです。

どんな名画、名作であっても30代、40代、50代になって観た映画は、その人の人生最高の映画にはなり得ないそうです。

なぜなら、二十歳前後が人生の中で最も感性が豊かだから。

感性が豊かな時期に観た映画が人生最高の映画になりうるのです。

 

『感性』とは、〝物事を深く心に感じ取る働き〟とあります。

 

家具工場の隣にはイスラムの小学校があり、夕方にはコーランの調べがどこからか聞こえ、カナオカ君はそのような今まで経験をしたことがない〝物事〟に触れ〝深く心に感じ取〟ったのでしょう

10年前、そのころハタチをいくつか過ぎた歳のカナオカ君の見た風景は、ワタシの見ているものとは違うものだったようです。

あのとうもろこし畑を通るたびに、カナオカ君の瞳の輝きを思い出します。