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カデ君ち
5月に注文した家具が出来上がり、コンテナに積み込まれた。
注文時に半金を払い、残りは商品と引き換えに払う。
複数のサプライヤーがいるのでその合計額をカーゴ屋(商品を回収し荷造りをしてコンテナに積み込む業者)に払う。
カーゴ屋もバリとジャワ、それぞれにいる。
すべての金額の合計をバリのドライバー、カデ君の口座に送金し、カデ君が各業者への残金、カーゴ屋の手数料、海上運賃をカーゴ屋の口座に送金する。
日本からの送金手数料は1回4000円だが、この方法だとワタシはカデ君への1回の送金で済む。
時々、人からそれって危なくないか?そのドライバー君、信用できるのか?と言われることがある。
たとえ信用できる人間だとしても、魔がさして、たとえば何かの事情で金に困っている時に大金が振り込まれてきたら、つい使ってしまうことがあるんじゃないの?と言われる。
バリのドライバーはカデ君が三代目。
最初のマデスラ君は2~3回ドライバーとして働いてくれたが、そのころ新しくできたフォーシーズンホテルのドアマンに就職が決まり、それが専業になった。
そのマデスラ君に紹介されたのが友達のワヤン君。
彼も2~3回ドライバーをやった後、実家の仕事(竹風鈴の製作)を継がなくてはならなくなった。
そして、ワヤン君が紹介してくれたのが、彼が当時付き合っていたガールフレンドの弟のカデ君で、それ以来16~7年の付き合いになる。
デンパサールの大学の化学科を出た彼はジャワのケミカルファクトリーに就職するか迷った末、バリに残った。
感情豊かなインドネシア人の中で、彼はとても冷静な、珍しい性格だった。
2002年にバリで爆弾テロがあった。
200人以上の死者が出て、国内のイスラム過激派〝ジェマ・イスラミア〟が犯行声明を出した。
その時ワタシはバリにいた。
テロ事件の2日後、カデ君の運転でデンパサール方面へ行っていたら、彼の奥さんからケータイに電話がかかってきた。
黙って電話を聞いていた彼は奥さんの話が終わると二言三言話すと電話を切った。
「奥さん、なんだって?」
「今日、デンパサールでまた爆弾事件があったって。公衆電話が爆発したって。」
本当?と尋ねると彼はこう言った。
「バリには Chain Mobile というのがある。バリ人は噂が好きだから、次から次へとケータイで噂が広がる。たぶんそれだよ。彼女もニュースを見たわけじゃない。友達からの電話で知ったらしいからね。」
その日、ホテルに帰ってスタッフに訊くとやはりそんな爆発事件は無かった。
ほとんどのバリ人(インドネシア人)は幽霊の存在を信じている。
日本へ留学経験のあるインテリでも幽霊の話になると止まらない。
どこどこで見た、髪が長く目が赤い女の幽霊だった、etc…
この幽霊話をすると必ずと言っていいほど盛り上がるのが面白くて、一時、インドネシアで会う人会う人に幽霊を見たか訊いた。
幽霊を見たことがないのはカデ君だけだった。
「いるかもしれないが、少なくとも僕は見たことがない。」
こんなこともあった。
カデ君のパパは黒々とした髪を束ね、見た目はワタシよりもずっと若い。
カデのパパはいくつ?と訊いたとき(5~6年前です)彼はこう言った。
「たぶん、55から60の間」
たぶん・・・?
55から60の間・・・?
自分の父親なのに正確な年齢がわからないのか?
彼の説明はこうだった。
彼の父親が生まれたころ、インドネシアは今よりもずっと後進国で、いろいろな行政が整備されていなかった。
現在の戸籍も彼の父親が生まれてから後にできたもので、生年も申告したものだったそうだ。
だから戸籍上の年齢は確定しているが、本当の歳ははっきりわからない。
彼の
「たぶん、55から60の間」
と言う答えは、ある意味とても正確な表現だった。
以前、彼の子どもが目の怪我をして治療に多額の金がかかった、と言ったことがあった。
ワタシは必要な時があったら、ワタシの口座の金を使っても構わない、と言ったら彼は「アリガト。デモ ダイジョーブ」と言った。
その時はわからなかったが、彼の家はとても裕福な家だということをのちに少しづつ知るようになった。
カデ君ちの敷地内にある『家寺』です。ピンクの女性はカデ君の奥さん、白の男性はカデパパです。
2006年5月にジャワ地震が起きた。
3500人の死者を出したその地震が起きた時、ちょうど注文の家具が出来上がり、カーゴ屋へ海上運賃を送金するタイミングだった。
ところが送金先の状況がよくわかっていない日本の銀行は非常にナーバスになっていて、送金手続きをした後に念書に押印してくれとか、この書類にもハンコくださいとか、なかなか送金を実行できないでいた。
カーゴ屋からは早く送金してくれと言われるし、ワタシも早く商品が欲しかったし、イライラしながら一週間が過ぎた。
そのころは送金が実行されても向こうに着くまで二~三日かかった。
入金を確認してからカーゴ屋は家具をコンテナに積み込む。
それから向こうの税関の検査を受けてから出港となる。
だから通常は、送金が実行されてから一週間から10日後の出向となる。
ところが、その時は送金実行と同時に海上輸送のスケジュールがメールで届いた。
ということはもう出港したということだ。
なぜ?という疑問はあったが早いに越したことはない、よっしゃ、と喜んで疑問はすぐに忘れた。
その次の出張時、カデ君との雑談時、そういえばさ、前回のシッピングはジャワのカーゴ屋 金が着く前にコンテナ出港させたね、と言うと、それはカデ君が金を立て替えてくれていたからなのだった。
日本円で30万くらいの金だったけど、インドネシアの物価の中での30万は大きい。
写真に写っている建物は全部カデ君ちです。撮っている場所は家寺で、その下はキャッチボールできるような広さの台所です。
最近彼は〝エカサリ・ツアー〟という娘の名前を付けた旅行代理店を始めた。
ワタシのドライバーをしている時も、時々彼のケータイに客からの電話がかかってくる。
明日のジャカルタ行のチケットを手配してくれ。〝川下り〟を予約したい。パラセーリングをしたい。
申し込みを受けると彼はいろんなところに電話をして、話をまとめ、客へ返事をする。
これからバリへ行く予定のある方、現地でのアクティビティを検討されている方は是非エカサリ・ツアーをご利用ください。