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おじいちゃんたちのスゴ技
ちょっと前の話になるけれど、知り合いの木工屋が廃業した。
兄弟二人でやっていた『森照明』という木工屋で、照明を専門に作っていた。
兄弟といってももう高齢で、お兄さんが施設に入り、それを機に廃業を決めた。
ツバキヤマさん、材量とかたくさんあるけれどいらんかね、と声をかけてもらい取りに行った。
思ったよりも大量の在庫があって、ウチでは使いきれないので知り合いの大工、イズクラさんに声をかけた。
イズクラさんは2トントラックで来たが、1回では積み切らず2往復した。
森さんはただで持ってっていいよ、と言ってたけどイズクラさんはお金を払ったらしい。
ああいうところ義理堅いんだよな、あの人。
照明屋なので乳白色のアクリル板もたくさんあって、珠洲の建具屋さんが取りに来たけど、うちじゃこんなに使いきれないと言って半分くらい持ってった。
森兄弟はこれからどれだけ作るつもりだったんだろう。
完成品の照明もいくつかもらった。
そのひとつがコレ。


何かのコンテストに出すために作ったのだけれど、結局出さなかったらしい。
森兄弟のおじいちゃんたちはすごい技術力を持っている。
9mmの角材を組み合わせてこの照明を作った。
細い角材を交差させるのってむずかしいんだぜ。
そうそう、9mmの角材を切り出すのはこの材木から。

米杉の特等品。希少な柾目の板。
そしてすごいのがココ。

灯は点いているけれど配線が見えない。
どこから配線が来てるのかというと…

9mmの角材の中を通ってきている!!!
「こんなのもらっていいんですか?」
と訊いたら
「残ったら廃棄しちゃうんだからもらってって」
と言われてもらってきた。
兄弟ふたりの木工屋だから弟子はいない。
だからあのスゴ技は誰も受け継がない。
森照明の作業場と倉庫の跡地にはもう新しい住宅が建っていた。