ハナ2号

ハナを送った斎場からの帰り路、シンタが訊いてきた。

「お父さん、次の犬 飼ってもいい?」

なぬ?もう?

長年連れ添った奥さんと死別したあと すぐに若い後妻をもらうようでやだな、と言うと、ゴサイってなに?と訊かれたが・・・

「お父さん!もらってやらないと処分されちゃうんだよ!」

よくよく話を聞いてみると、こういう事らしい。

捕獲された捨て犬や迷い犬が殺処分される前に引き取り、里親を探す 『石川ドッグレスキュー』 というボランティア団体がある。

そこで待機している犬を引き取りたいという。

ハナの死に触れて、命が失われることに敏感になっているのかもしれない。

もらってやらないと処分されちゃうんだよ。

大義名分ですよ、それは。

逆らえません。

実際にはボランティアの方が引き取っているので、処分されることはないが・・

 

しかし、処分される(と思っている)犬を救いたい一心の子どもと違い、大人には一抹の不安もある。

どんな犬かわからない。

子犬ではない、成犬なのだ。

そのことをカミさんに話すと

「お試し期間というのがあって、2週間預かって、それから返事をすればいいの。相性が悪いってこともあるし。」

ははあ~ん。

シンタのドッグレスキューの情報源はコイツだな・・

 

ドッグレスキューから犬を引き取るのにはいくつかの条件がある。

まず、家族全員の同意があること。

ワクチン接種、健康診断、フィラリア予防など基本的に必要なことの費用を負担すること。

犬を引き取る家庭が、犬を飼える環境にあるかどうか、etc…

 

 

5月9日。

ドッグレスキューのオオヤさんがその犬を連れてきた。

カミさんとシンタは前日に会っているが、ワタシとは初対面。

なんと・・・驚くほどハナとクリソツ!

さっきこの犬を見たフジタも

「マジ! うっそ~!」

と、30過ぎとは思えない表現で驚いていた。

はな

シンタは、「ハナの生まれかわりだ」と言い、カミさんは、ハナが引き合わせてくれたと言う。

ワタシは神がかり的なことは信じない性質だが、何かの縁なのでしょうなあ・・

〝スミレ〟という名前だが、新しい名前を付けてもいいそうなので〝ハナ〟にした。

今は「ハナ」と呼んでも耳をピクと動かすだけだが、そのうちに反応するようになるだろう。

捕獲され、処分場に何日か入れられていたので少々オドオドした感じがする。

思えば死んだハナも我が家に来たばかりのころはいろいろなことに敏感で、眠っている姿を見たことがなかった。

 

今朝はハナと初散歩。

推定5歳のハナは元気で、1時間、約6キロの散歩をぐいぐいとリードを引っ張りながら歩いた。

途中、公園でゲートボールの準備をするお年寄りたちを眺めながらベンチで一休み。

昨日は身体を触らせてくれなかったハナも、今朝は頭を撫でさせてくれた。

ハナの子ども  ミギー

15年前に迷い犬だったのが、いつのまにか我が家のワンコになったのが ハナ。

迷子になっていたハナを保護したのだが、当時はペットを飼ってはいけない借家に住んでいたので、一応 大家さんに飼い主が見つかるまで預からせてください、と頼んだ。

大家さんはとてもいい人だったので気持ちよく いいですよ、と許可をもらったが後になってその犬が妊娠していることがわかった。

大家さんに言い出せないまま、ひと月経つと6匹生んじまった。

可愛い子犬たちだった。

生まれたばかりなのにそれぞれ違った性格を持ち、毛の色も違った。

茶色いやつ、黒いやつ、ブチのやつ。

かなう事なら6匹全部飼いたかったが、それは許されなかった。

さっそく子犬たちの貰い手探しに奔走した。

当時勤務していた会社のアルバイト君、近所の新聞販売店、友人の友人・・・

1匹ずつ貰われていったが最後の1匹の貰い手がなかなか見つからなかった。

何しろ雑種である。

犬を飼いたい、という人はそこそこいるがレトリバーだとかマルチーズだとか「〇〇犬を飼いたい」という希望があるようだ。

「雑種ですか・・・」と言われ断られることが多かった。

 

そんな中、空手部の先輩で当時同じ会社に勤務していたタカタ先輩に子犬のことを話した。

「先輩、子犬いりませんか?」

「お、いいよ。」

どんな犬か、どんな事情かなど何も説明しないうちにあっさりとした答えが返ってきた。

「雑種ですよ?」

「犬は犬だろ。」

竹を割ったような性格であるのは承知していたが、あまりにスカっとした応答に思わず笑いが出た。

 

当時金沢に住んでいたワタシの家から、東京の先輩の家まで子犬は『犬の宅急便』で送られた。

ワンボックスカーが〝集荷〟に来て、小さなかごに入れられた。

犬のサイズや種類(雑種か、高価な犬か)によって料金が決まるようだがたしか9千円くらいだったと思う。

子犬は先輩のお宅で、当時流行っていた青年誌コミックの登場人物(?)にちなみ「ミギー」と名付けられた。

 

最後のミギーが貰われていって、母親のハナだけが残った。

成犬は貰い手がいないので我が家で引き取り、犬を飼ってもよい借家へ引っ越した。

 

年賀状などで成長したミギーの写真を見たことはあるが、あれからあの子犬、ミギーとは会っていない。

 

昨日、タカタ先輩からメールが来た。

 

『ミギーです
 本日午前2時、永眠しました。
 椿のおかげで家族皆 良い思い出の14年を共有できました。
 奥様にも宜しくお伝えください。』

 

ミギーをかごに入れて東京へ送った日が、ついこの間のように思える。