骨折

人生5回目の骨折をした。

幼稚園のころ右足の脛を、中学では右のひじを、高校では左手首を、大人になって左の鎖骨を骨折した。

どれも太い骨をボッキリだった。

 

 

 

高校生のころワタシは空手部で、文化祭の時に試割(板とか割るやつ)をすることになっていた。

文化祭には他校の女子も来る。

ワタシの高校は男子校だったのでそりゃ気合も入る。

余談ですが、今は男子校は全体の2%、50校に1校しかないそうです。絶滅危惧種です。

ちょっとアクロバチックに高い位置にある板を割ろうと思った。

肩車をした二組に板を持たせ、四つ這いになった後輩を土台にジャンプして蹴って割る。

さあできるかどうかやってみようと助走をつけて土台のヤツを踏んだらそいつがこけた。

バランスを失い手首から落ちた。

左手を見ると手首のところからぐにゃりと曲がっている。

こりゃ手首の関節が外れたな、と思って隣の柔道場へ走った。

柔道場には日体大の柔道部のOBで、大魔神のようなミウラ先生がいた。

「先生、関節が外れたみたいなんですが」

と言って手首を見せると、ミウラ先生はその部分を引っ張ったりねじったりした後

「関節ははまったが、折れてるな。体育館の玄関で待ってなさい。」

と言って車を取りに行った。

体育館の玄関で折れた手首を濡れタオルで巻いてミウラ先生を待っていると、バスケの顧問のハマダ先生が、どうした、ツバキと声をかけてきた。

「ホネ、折れちゃったんです」と言うと

「ホントかよ~」と半信半疑だった。

ワタシも愛想がいいので引きつり笑顔で答えたのがよくなかった。

 

 

ミウラ先生の車で隣町の柔道場へ走った。

そこはワタシの高校・大学の柔道部のOBが経営している柔道場兼柔道整復師の医院だった。

整復師の先生が奥さん(たぶん)に何か言うと、奥さんはジョッキに水を満たして持ってきた。

先生は汗だらけの柔道着姿のまま、ワタシのわきの下に足を突っ込んで思い切り手首を引っ張って骨を接いだ。

折れたときより痛かった。

そしてワタシは喉がカラカラに渇き、ジョッキの水を飲みほした。

 

 

骨接ぎって、練習するのだろうか?

折れた骨を引っ張って元の位置の戻すのは、理屈としてはわかるけど、どれくらいの力で引っ張って、どんな角度でってのがあるだろう。

この時の柔道整復師の先生は「うまくつながったよ」みたいなことを言ってくれたけど、それは何回も経験してるからその感覚がわかるのだろうけど、最初はどうだったの?

最初からヒトでやったわけじゃないんでしょ。

骨折れたやつが来た。さあ、お前初めてだけどやってみろ。ってな具合にはならないよね。

失敗したら大変だもんね。

模型みたいので練習するんでしょ…

 

 

 

 

ワタシの1~4回目の骨折はすべて接骨院で治療した。

が、5回目の今回は初めて手術した。

 

棚を運んでいる時にバランスを崩し、前に倒れた。

とっさに棚の天板が傷つかないように棚と地面の間に手を挟んだ。

棚とワタシの全体重が右手の指にかかった。

人差し指の腹が破れ、ぼたぼたと出血した。

その裂傷だけだと思っていたら、形成外科に行ってレントゲンを撮ったら

「骨折してますよ」

と言われた。

骨折といっても小さな骨が欠けただけなんだけど、そこは指先を伸ばす腱が付いてる場所で、そのままにしておくと指が伸びず曲がったままになってしまうらしい。

指の骨に鋼線を2本貫通させ、欠けた骨を固定させなければいけない。

開業医の先生から紹介状をもらい、その足で松任中央病院へ行った。

 

11:00に診断を受け14:00に手術。

担当の医師は女医さんだったが、この大きな病院の外科部長だった。

人差し指の根元に麻酔を打って(コレが痛い)、爪の間からドリルを刺し込み骨に貫通穴を開ける(麻酔が効いているのでコレは痛くない)。

ワタシの顔の上には目隠しの布が掛けられているのでその様子を見ることはできないがドリルのギュルギュルという音は聞こえる。

その下穴に鋼線を刺して手術は完了。

 

 

水曜に手術をして3日後の土曜の夜。

指に刺してある鋼線は後で抜きやすいように、体外に出ている部分は J 型に折れ曲がっている。

感染する可能性があるのでいつも清潔にしておいてください、と言われたので風呂で包帯を外し、指用に買った柔らかい歯ブラシで洗った。

風呂から出てバスタオルで体を拭いていたら、そのバスタオルに J の字が引っかかって1本抜けてしまった!

ああ、そういえば指を洗う時はお風呂から出てからやってくださいって言ってたな。

こういうことだったのか…

 

手術から5日目の月曜に病院へ。

予約の日ではないのに来た訳を看護婦さんに話すと、診察の時にはその話が女医さんに伝わっているらしく、診察室に入ったワタシを見ることもなく机に向かったままセンセは冷たい声でこう言った。

「最短記録やわ。」

そして再手術。

手術前に看護婦さんに、センセに最短記録って言われちゃったよ、と言うと、私もここで3年看護婦やってますけど一番速いです~ふふ、と楽しそうに笑ってくれた。

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またドリルギュルギュルをやって再手術完了。

 

 

外科医もドリルギュルギュルは練習するんだろうなぁ。

やったこともないのにいきなり人の骨にドリルで穴開けられないよな。

オレだったら怖くてできないよ。

 

術後、気になっていたことを訊いた。

「先生、このドリルギュルギュルは最初は模型か何かで練習するんでしょ?」

すると女医さんはこともなげにこう言った。

「最初からヒトだったわね」

 

最近ビックリしたことです。