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申告してみた
海外旅行から帰ってくるとき、酒は3本までしか持ち込めませんよ、と言われたことがありませんか。
入国の際、持ち込む品によって免税の範囲があります。
香水は〇〇オンスとか、紙巻きたばこは〇〇本とか。。。
その数量は国によって違うのです。
それじゃ、酒を4本持ってきた時はどうなるのでしょう。
〝免税〟ですから、3本までは税金を免除されるということです。
その範囲を超えたのですから、税金を払わなければなりません。
そう、税金さえ払えば何本持ち込んでもいいのです。
ワタシは出張の帰りには家具用の取っ手金具などのサンプルを持って帰る事が多いので。その時は日本の税関申告書の 「・・・又は商業サンプルを持っている」 というところに 「はい」 と答え、課税のカウンターに進みます。
その商業サンプルの領収書を用意して税関職員の前で照合します。
少額なので課税されたことはありませんがスーツケースの中をシッカリと調べられます。
もしかしたら、課税カウンターに進み自ら申告したものは申告を隠れ蓑になにかアヤシイものを持っていることが多いのでしっかり調べること、なんてマニュアルがあるのかもしれません。
つばきやの家具パーツを作っている地域は極めてアルコールを入手するのがムズカシイ地域なので、いつもワタシは自分の飲む分と、ドライバーのデニさんが大好きな梅酒を土産に持って行きます。
今回の出張時には自分用にイモ焼酎の1.8Lパック。ビンは重たいし、割れる心配があるのです。
デニさんにはチョーヤの梅酒の1Lパック。
合わせて 2.8L 。
一方、インドネシアに入国する際の免税範囲は 1L まで。
前回、8月の出張の時です。
いつもは申告せずにシラっと免税カウンターを通り抜けるのですが、この時はスーツケースを開けられ、チェックされました。
梅酒の方には「Alc11%」なんて書いてあるし、焼酎の方はいかにも「酒」と言うデザインのパッケージで言い訳できません。
わかった、わかった、税金払います、と言いましたが、 「1Lを超えるものは持っていません」 と虚偽の申告をしたのですから没収されても文句は言えません。
ところが、その税関職員はとても寛大なお方で、次から気をつけなさいと見逃してくれました。
税金を払うこともありませんでした。
たかだか2~3千円のことでハラハラするのもバカらしいので今回は正直に申告することにしたのです。
申告書には 「以下の物品を持っていますか」 との問いかけがあり、 「動物、魚介類、植物」とか 「麻薬類、向精神薬、医薬品、ポルノ製品」とか、様々な物品名が記載されています。
普通は全てに 「いいえ」と答えます。
ワタシは 「・・・またアルコール飲料1リットルを超える量」というところに 「はい」と答え、裏面に
品名「Alcohol drinks」、数量「2.8L」、価格「2880JPY」 と記しました。
価格の根拠となる酒販店のレシートも用意してあります。
ちゃんと申告する人が少ないのでしょう、若い税関職員はなんだか面倒なのが来たなと言う顔で、申告書と酒の現物を確認してからもモタモタしています。
「税金を払うので手続きをしてください」
と言うと、彼はちょっと待てと どこかへ行き、しばらくしてからオジサン職員とともに現れました。
そのオジサン職員にちょっと広い取調室のようなところに連れて行かれ、長机をはさんで座りました。
「税金はいくらですか」
「ヨンシェンエン(日本語)」
「なぜジャパニーズエンなのだ」
「あんたは到着したばかりでルピアを持ってないだろ」
「持っている」
「じゃ、40万ルピア(約4千円)だ」
「高い」
彼はそうだよ、高いんだよ、と言うようにうなずきました。
税率は何パーセントなのだ、と訊くと彼の目が泳ぎ、ん~、2Lを超えたら40万ルピアなのだ、と言いました。
「でも、30万ルピアにまけてやってもいい」
オーイ、勝手にまけてもいいのかよ。
「じゃ、ノタ(受け取りの領収書のようなもの)を要求する」
「ノタは出ない」
ノタが無いなら払わない、と言って横を向きました。
ただいま夕方の5時半。
今日はホテルへ行ってメシ食って寝るだけなので持久戦になってもぜーんぜん平気だし。
迎えに来て、外で待ってるドライバーのカデ君にもFBでメッセージ送れば大丈夫だし。
いつの間にか後ろのベンチには若い日本人のカップルが順番待ちをしていました。
ワタシは10万ルピア(約千円)紙幣を机の上に置きました。
「これならノタは要らない。30万ならノタをよ要求する」
その後、もう1枚寄こせとかやり取りはありましたが結局、10万ルピアでいいということになりました。
実際の税率がいくらなのかわかりませんが、ま、これで一件落着、とワタシが席を立つと次は後ろのカップルの男性の番です。
ワタシとオジサン職員の、インドネシア語でのやり取りを聞いていた彼は、これから自分もそんなやり取りをしなければならないと想像したのでしょうか、 「あ~、全然わっからへん!」 と弱りながら立ち上がりました。
「何でひっかかったんですか?」
「タバコらしいんですわ」
ああ、よくひっかかるんですよ、タバコは。
タバコについては 「200本以上はダメ」ってことになってます。
免税店で売られているタバコは1カートン。
20本入りの箱が10箱。
つまり200本単位で売られているのです。
「200本以上」だから 「200本」はダメなんですよ。
まるで税関がタバコを没収するためのひっかけ問題です。
オジサン職員に、彼はワタシの友達です、と言って若い彼に同席しました。
「500円くらい払ってもいいですか」
「ええ、そんなもんですむなら」
ということで、ワタシは彼のタバコのカートンを開け、そのうちの1箱から1本を取出し、5万ルピア札とともにオジサン職員の前へ置きました。
これでタバコは199本になり免税範囲になります。
昔、大阪の同業者に教わった方法です。
先ほどのやり取りで、支払われた金が自分の懐に入っていることが周知になり気まずいオジサン職員は、小さな声で、オーケー、オーケー と言いました。
日本人の感覚からすると旅行者から金を巻き上げるオジサン職員はとんでもないワルモノのように思えるかもしれませんが、素ではそんなに悪い人間ではないのだろうと思います(日本でコレをやる奴は相当悪いやつですが)。
自分たちに比べて金持ちの日本人から少しばかりの金をいただくことにあまり罪悪感はないのでしょう。
おそらく家庭では優しいお父さんで、近所の気のいいオッサンなんだろうと思います。
さあ、出張仕事も終わりました。
日本へ帰る飛行機が出発する前にショッピングセンターに寄り、生の唐辛子とライムを買いました。
時々このふたつを持って帰ります。
ライムは直径3センチほどの青くて丸いもの。
きゅっと絞って酒に入れたり、肴にかけたりするとレモンとは違うさわやかな風味になるのです。
冷蔵庫に入れておけば1~2カ月は持つので、たくさん買ってきます。
野菜売り場には何種類もの唐辛子が並んでいます。
一番辛味が強いといわれる小さな青唐辛子は、張りがあって色鮮やかでヘタが茶色くなってないものをひとつひとつ選びました。
4種類あった赤唐辛子の中からは一番値段の高いものを選びました。
細かく刻んでしょうゆや泡盛やオイルに付け込んで、調味用としてしばらく楽しめます。
日本に入国する際は、実はこれらは申請しなければなりません。
税関申告書の 「生の果実・野菜を持っていますか」に 「はい」と答えた人は入国前に検疫を受けなければならないのです。
コレも、ワタシはいつもシラっと免税カウンターを通過していました。
今回も 「いいえ」の方にチェックをしましたが思い直し 「はい」と書き換えました。
日本でもちゃんと申告したらどうなるのか知りたかったのです。
バッゲージレーンに荷物が早く出てきたので、税関のカウンターに進んだ時はまだ誰も並んでいませんでした。
免税、課税のカウンターを横目に職員の方に植物検疫はどこですか?と訊くと あ、あの一番向こうの奥です、と言われ、スーツケースをカラカラと転がしていきました。
銀縁メガネの真面目そうな職員に、品目は何ですか、と尋ねられ 「唐辛子とライムです」 と答えると彼は申し訳なさそうに説明を始めました。
「大変申し訳ありません。せっかくお土産としてお持ちになられたのだと思いますが、唐辛子とかんきつ類は輸入禁止の対象となっています。特に唐辛子類は有効な害虫処理の方法が確立されていないので・・・」
樹脂で固められた害虫の標本を見せられたり、日本の農林業が外国からの病害虫によってどれくらいの被害を受けているかなどグラフを見せられたり、懇切丁寧な説明を受けました。
彼は本当に申し訳なさそうに頭を下げました。
結局、唐辛子とライムは破棄処分となりました。
彼には袖の下5万円を払っても通用しないでしょうね。
つくづく日本の官吏は優秀だと思います。